歳をとると筋肉痛が遅れて起こるのはなぜ?  ( 2006/07/06 )  

先日、ある会合で「年をとると筋肉痛が遅れて出てくるのは何故?」と質問され、「月と太陽と気象」をテーマにしていた話だったので少し困ってしまった。

会場にはボディビルダーをしている方などがいて、遅筋速筋がどうのこうのという話をされ、いろいろと話題が広がって面白かったが、「加齢によって筋肉痛=こわりの発現が遅れるとしたら、修復反応の加齢による遅延ということで説明がつくのではないか」ということでお茶を濁しておいた。

「歳をとると筋肉痛が遅れて起こる」というのは経験的によく言われている。
なぜそうなるのか「筋肉痛の加齢遅延説」について少し調べてみた。

いわゆる運動後の筋肉痛は、遅発性筋肉痛(DOMS=delayed onset muscle soreness)と呼ばれている。

本態あるいは病態
・遅発性筋肉痛の本態は、筋と結合組織の損傷後の炎症反応に伴う現象
・痛覚受容器は、筋線維そのものにはなく、筋膜に存在する
・筋線維の微細損傷の修復時にみられる炎症過程で発痛物質が発生し、これが筋膜を刺激して痛みが起こる
・筋肉組織からの逸脱酵素の一つであるCPKは、運動後3、4日目にピークに達する
・CPKは、筋線維の傷害を反映している
・CPKのピーク時点で、筋線維は壊死し、白血球の浸潤や腫脹などの炎症像が見られる
・筋繊維の再生には3、4週間かかる

原因となる運動
・筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する運動(伸張性運動)に伴って起こる
 筋長が最大限に伸びた時に伸張負荷が加わると、生じ易く、筋力低下、腫脹も顕著になる
・筋肉が短縮する動作のみ(短縮性運動)ではほとんど生じない

その他知見
・3〜5歳の幼児期には筋肉痛が起こらない
・20歳と60歳の人に相対強度が同じ運動をさせて比較
 筋肉痛の発現までの時間や回復に要する時間に差がない
 筋肉痛の程度は高齢者で有意に軽度であった

歳をとると筋肉痛が遅れて起こるのはなぜか?( 筋肉痛の加齢遅延説 )

◆横浜市立大学・野坂和則
 加齢遅延説そのものに疑問
 年齢毎に相対強度が同じ伸張性運動を行わせて比較
 若い頃は直後から筋痛を生じるような激しく強い運動をしがちであり、筋肉痛が早く出る感じ
 歳をとると若い頃のような運動の仕方もなくなり、筋肉痛が(若い頃より)遅くなる感じ
 筋肉痛は、運動の種類や強度による違いや個人差が大きい
 要するに「歳をとると筋痛が遅れて生じるのは誤り」と結論

◆東京学芸大学・宮崎義憲
 加齢遅延説をそのまま受け入れて
 筋肉痛が遅れて発生するのは、加齢により血流が悪くなり、白血球の集まりが遅く
 傷ついた筋線維を取り除くのが遅れ、発痛物質の発生も遅れ、痛みの発現も遅くなってしまう
 筋線維の傷害後に現れる炎症反応が若い人では早く、年をとるとその反応が鈍くなることが原因の一つ